9月下旬、全国で一斉に行われている国勢調査の現場で、前代未聞の詐欺事件が発生しました。調査員が、調査対象となる高齢者から「調査票の記入代行料」として現金をだまし取られるという被害が相次いでいることが判明しました。
被害に遭ったのは、都内在住のベテラン調査員・田中さん(65)。田中さんは、いつものように担当地区の高齢者宅を訪問し、丁寧に調査の説明を行っていました。しかし、その家の住人である鈴木さん(88)が「ああ、国勢調査ね。さっき若い人が来て、もう済ませちゃったよ」と一言。田中さんが不審に思い詳しく話を聞くと、鈴木さんの元に「国勢調査員の研修生」と名乗る人物が訪問。調査票の記入に手間取っている鈴木さんに対し、「お困りのようですね。私どもが代わりに記入しますので、調査票を預からせていただきます。なお、代行料として1万円ほど頂いております」と説明し、現金を受け取って立ち去ったというのです。
同様の被害は、別の調査員からも報告されています。調査票の回収を装い、「返送用の切手代」や「データ入力手数料」など、さまざまな名目で現金を要求する手口が確認されています。
この事態を受け、総務省は「国勢調査員が金銭を要求することは一切ありません」と注意喚起。今回の事態を重く見て、今後は調査員への「詐欺対策研修」を強化する方針を固めました。また、被害に遭った調査員への支援として、有志の調査員からなる「被害調査員を励ます会」が発足。調査員同士で被害状況を共有し、精神的なケアを行うとともに、今後の詐欺防止策について議論を進めています。
国勢調査は国民の生活を豊かにするための重要な調査ですが、その裏側で、調査員自身の安全が脅かされるという皮肉な事態が露呈しました。総務省は引き続き、調査員への注意喚起と研修を徹底し、調査の円滑な実施を目指します。

