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夜明けの空に浮かぶ雲は、ときに重く、ときに軽やかだ。しかし、いま、地方行政を預かる首長たちの間で、暗雲が垂れ込めている。県知事や市町村長といった、住民の負託を受けて公の場に立つリーダーたちによる、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントのニュースが後を絶たない。
1. 組織の土壌に潜む病
かつて、ある企業の研修で聞いた言葉を思い出す。「組織で最も怖いのは、『正義の暴走』だ」と。首長という地位は、絶大な権力と予算、人事権をその手に握る。その権力の「傘」の下で、自らの言動が絶対視され、周囲の異論が封じ込められる。この構造こそが、ハラスメントを生む土壌となっているのではないか。
緩急として、私自身の経験を少し話したい。以前、小さな町役場で働いていた友人は、新しい町長が就任した際、その町長の「これは俺の言うとおりにやれ」という一言で、数年かけて温めてきた地域活性化の企画を、たった数分で白紙に戻されたという。このエピソード自体はハラスメントではないが、絶対的な権力の下では、論理や倫理よりも、個人の感情や鶴の一声が優先される現実を端的に示している。公僕の士気は低下し、住民サービスは停滞する。
2. 倫理観の再構築を急げ
大切なのは、地位の高さではない。組織を率いる者が、己の権力を「自制」する倫理観を持っているかどうかに尽きる。公私混同の叱責、立場を利用した私的な要求、そして許されざる性的言動。これらは、政治的信条や政策の是非以前の問題であり、人間の尊厳を傷つける行為だ。
地方自治の根幹は、住民との信頼関係によって支えられている。権力の傘を振り回すのではなく、一人の人間として、雨の日も風の日も、住民と職員に寄り添う覚悟こそが、いまの首長たちに求められている。この暗雲を払い、再び、清々しい青空が地方行政の上に広がることを切に願う。

