古代より、人々は「徳を積む」ことで死後の幸福、すなわち天国への切符を手にできると信じてきた。しかし、多様化・複雑化する現代社会において、その「徳」の具体的な内容もまた、劇的に変化していることが、最新の研究で明らかになった。
この度、天国行きの選考基準を極秘裏に調査していた国際徳積学会（International Virtue Accumulation Society: IVAS）が、「現代における天国行き確定の具体的行動」、通称「新・三徳」を発表。その内容は、従来の常識を覆す、極めて現代的なものであった。
現代社会で「天国行き」を決める新・三徳とは？
IVASによると、現代の「徳」は、「デジタル・デトックス」「匿名ボランティア」「AI倫理の啓発」の３つに集約されるという。
1.「デジタル・デトックス」：週に一度、スマートフォンの電源を丸一日オフ
- 積める徳のメカニズム: 現代人の魂は、常に情報過多の電磁波にさらされ、疲弊している。定期的な電源オフは、自らの魂に「安息の空間」を与える行為であり、他者への無用な通知や反応を絶つことで、「沈黙の慈悲」を実践していると見なされる。この「デジタル自制心」が、天国での高い評価につながる。
- IVAS会長のコメント: 「他人に迷惑をかけずに自らの時間を制御できる者は、天国でも秩序を乱さない。これぞ究極の自己犠牲である。」
2.「匿名ボランティア」：「推し」の配信者に無記名で投げ銭（スーパーチャットなど）
- 積める徳のメカニズム: 昔の徳は「見返りを求めない施し」であったが、現代においては、その施しを「最も必要とされている場所」に届ける知恵が求められる。現代社会において、経済的・精神的に活動の「燃料」を必要としている個人クリエイターに対し、名乗り出ずに金銭的支援を行う行為は、「真の匿名性」と「文化的支援」という二重の徳を積むとされる。
- IVAS会長のコメント: 「承認欲求という名の煩悩を克服し、純粋にクリエイティブな活動を支える姿勢は、天国の神々にも感銘を与える。」
3.「AI倫理の啓発」：SNSで誤情報（フェイクニュース）に惑わされそうになった友人一人に、正しい情報源を優しく教える
- 積める徳のメカニズム: 現代最大の悪は「無自覚な情報の拡散」であり、これは過去の「無益な争いの種まき」に匹敵する。AIが生成するフェイクニュースの波から、特定の「友人一人」を救うという個別的な行動は、「デジタル空間における灯台」と評価される。不特定多数を相手にするのではなく、一対一の優しさに、徳の真髄が見出された。
- IVAS会長のコメント: 「情報社会の救世主とは、広範囲に叫ぶ者ではない。目の前の一人にそっと手を差し伸べる者だ。その積み重ねが、天国への道となる。」
結論として、現代の徳とは、煩悩の塊であるスマートフォンや匿名性を逆手に取り、他者への目立たない貢献と自己制御を実践することである。
この新基準に照らし合わせると、古来の「道端の石をどける」などの徳は、現在の天国選考においては「加点対象外」となる模様だ。
