コラム: 黄金色の憂鬱

コラム

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  1. 物価の優等生の悲鳴

「物価の優等生」という称号をほしいままにしてきた鶏卵が、かつてない高騰を見せている。スーパーの売り場でパックを手に取り、その値札に思わず目を疑った経験を持つ人も多いだろう。数十年にわたり価格が安定していた頼もしい食材が、今や家計を直撃する存在となりつつある。鳥インフルエンザの猛威や飼料高騰が背景にあるとはいえ、毎日の食卓に欠かせないものだけに、その衝撃はボディーブローのように効いてくる。

  1. 巨人と大鵬と卵焼き

昭和の子供たちが愛したものを並べた流行語に「巨人・大鵬・卵焼き」がある。当時、卵は今よりも少し特別なご馳走の側面を持っていたのかもしれない。ふと思い出すのは、遠足の弁当に入っていた甘い卵焼きの記憶だ。黄色い彩りがあるだけで、箱の中がぱっと明るくなった。現在の高騰は、ニワトリという生き物と、私たちの食生活がいかに密接につながっているかを痛感させる。単なる「商品」の値上がり以上の、命のやり取りとしての重みを感じずにはいられない。

  1. 食卓の灯りを守る

それでも、卵のない食卓というのは想像しがたい。どんな料理にも寄り添い、変幻自在に姿を変えるあの万能さは、やはり代えがきかないものだ。生産者たちが懸命に供給を守ろうとしている今、私たち消費者もまた、少しの辛抱と感謝を持ってこの局面を見守るほかない。丼の上で輝く黄金色の黄身が、以前と変わらぬ温かさで私たちを励ましてくれる日を待ちたい。

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