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〜 老舗百貨店、困惑の末「特別な」の文字を自粛へ 〜
誤解の発端:セール商品に「特別な値段」を期待

【東京】老舗百貨店・四越伊勢丹の各店舗で、「特別価格」と表示された商品に対し、客が実際の価格の10倍以上の現金を支払おうとする前代未聞の事例が相次いでいることが、3日までに明らかになった。
この現象は、先月より始まった「夏の感謝セール」で、高級フルーツ詰め合わせに「特別価格:12,000円」と表記したのがきっかけだ。このフルーツの標準小売価格は15,000円であり、3,000円の割引を意味していた。しかし、一部の富裕層の顧客が「最高の品質には、相応の『特別な』金額が必要」と独自に解釈し、高額な支払いを申し出る事態に発展した。
独自の消費哲学:「安くされては価値が下がる」

客の一人である都内在住の主婦(70代)は、このフルーツ詰め合わせを購入する際、店員に対し次のように主張した。「最高の品に、普通の値段を付けてはいけないわ。この12万円こそが、このフルーツにふさわしい特別な価格よ」。彼女は標準小売価格(15,000円)の8倍にあたる12万円を支払おうとし、店側が割引価格であることを説明しても、「最高級品にふさわしい、特別に高い値段」であると頑として譲らなかった。
同様に、「特別価格10,000円」の英国製紳士用ネクタイ(標準小売価格15,000円)に対し、100万円の札束を差し出す富裕層も現れた。これらの客たちは、「特別な商品には特別な価値がある。その特別な価値を示すのが、この特別な価格だ」という独自の消費哲学を共有しているとみられる。店側が差額を返金しようとしても、「安くされては、この品の価値が下がる」「これは商品への敬意だ」と拒否し、お釣りを頑なに受け取ろうとしないケースが後を絶たないという。
百貨店の苦渋の決断:「特別」表記の全廃へ

事態を重く見た四越伊勢丹広報部は、当初「我々の意図する『特別価格』は、あくまで『お客様への感謝を込めた特別割引価格』であり、高額であることを意味するものではない」と説明会を開いて声明を発表。しかし、誤解した客は「いや、その『特別な割引』こそが、この品を普通のものにしてしまう」と論理的に反論。混乱は一向に収束しなかった。
最終的に同社は、「お客様の混乱を避けるとともに、商品の本質的な価値を守るため」として、今後セール時などに『特別』の文字を一切使用せず、『感謝割引価格』や『お買い得価格』といった、割引を明確に示す表現に全面的に切り替える方針を固めた。
この対策により、高額を払いたい客による混乱は沈静化に向かうとみられる。しかし、一部では「これからは『感謝割引価格』の商品に、さらに特別に高い金額を払って、百貨店と生産者に感謝の意を示す」という、新たな、そしてより複雑な消費トレンドが生まれる兆しも見え始めており、百貨店業界の静かなる戦いは続きそうだ。
■特別価格情報(オマージュ)
特別「価格」を特別「高く」と聞き間違いのようです。

