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都内の有名百貨店1階の化粧品売り場で13日、来店した女性客が人気アニメさながらの「呼吸」と「型」を叫びながら、試供品のコスメを使ってフルメイクを完遂するという事案が発生した。店員や居合わせた客が固唾を飲んで見守る中、女性は一寸の狂いもなく全ての工程を終え、その技術の高さに現場では自然と拍手が沸き起こった。
目撃者の証言によると、現れたのは都内在住の会社員、彩取(いろどり)ミサエさん(28)。彼女は新作のファンデーションを手に取ると、突如として深く息を吸い込み、「化粧の呼吸、壱ノ型!『毛穴埋め(けあなうめ)』!」と高らかに宣言。その瞬間、目にも留まらぬ速さでパフを動かし、瞬く間に肌の凹凸を消失させた。
通常、タッチアップ(試し塗り)は美容部員(BA)が行うのが通例だが、彩取さんが発する「気迫」に押され、BAはただ商品を手渡すことしかできなかったという。
その後も彩取さんの勢いは止まらない。 アイシャドウを手に取り「参ノ型!『濡れ感・ラメの舞』」と唱えれば、まぶたには絶妙なグラデーションが完成。続いてアイライナーを抜き放ち、「漆ノ型!『極細・跳ね上げの軌跡』」と叫ぶと同時に、手首のスナップだけで完璧なキャットラインを描ききった。
圧巻だったのは仕上げのリップメイクだ。閉店のアナウンスが流れ始めたタイミングに合わせ、彼女は大きく息を整えると、「全集中、常中……。終ノ型!『ティント・色持ちの煉獄』!!」と絶叫。一筆書きで唇に紅を差し、唇を合わせた「んー、まっ」の音が、店内のBGM終了と同時に響き渡った。
一部始終を目撃したベテラン美容部員は、「『隙の糸』が見えたかのような迷いのないブラシ捌きだった。あんなに高圧的なのにお金を払う気満々の客は初めて」と震える声で語った。
彩取さんはメイク完了後、「型が決まると化粧崩れもしない気がする」と満足げに語り、使用したコスメ一式(総額約5万円)を購入して去っていったという。
専門家は「大声を出すことで表情筋が動き、リフトアップ効果があったように錯覚しただけではないか」と冷静に分析しているが、同店では現在、呼吸を整えてから来店する客が急増している。

