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連日のように流れる火災のニュース。その原因に耳を傾けると、コンロの消し忘れやタバコの不始末といった「うっかり」が目立ちます。しかし、私たちの日常生活には、注意深く見渡さなければ気づけない「静かなる火種」が至る所に潜んでいることを忘れてはなりません。
かつて江戸の町を焼き尽くした大火の多くは、激しい風と乾燥が招いた悲劇でした。現代の住まいは燃えにくい建材に守られていますが、その内部では、当時の人々には想像もつかなかった「電気」という目に見えない火種が、壁の裏や家具の隙間で牙を研いでいます。
埃と湿気が織りなす「トラッキング」
特に警戒すべきは、冷蔵庫やテレビの裏など、差しっぱなしのコンセントです。溜まった埃が空気中の水分を吸い、微弱な電流を漏らし続けることで発火する「トラッキング現象」は、住人が寝静まった深夜や、誰もいない留守中に音もなく牙を剥きます。
掃除機のノズルが届かない場所こそ、実は最も危険な火元になり得ます。定期的にプラグを抜き、乾いた布で埃を拭う。そのわずか数十秒の習慣が、大切な家を守る盾となります。
太陽が招く「収れん」の意外な罠
もう一つ、見落としがちなのが「光」の悪戯です。冬の澄んだ陽光が窓際に置かれた鏡やペットボトルに反射し、虫眼鏡のように一点を熱して出火する「収れん火災」は、皮肉にも晴天の穏やかな午後に多く発生します。
報道される派手な出火原因に気を取られがちですが、本当に恐ろしいのは、日常の風景に溶け込んでしまった油断です。今一度、部屋の隅々に目を凝らしてみませんか。暮らしの「死角」をなくすことが、火災を防ぐ最短ルートなのです。
