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「ぼんやりした不安」にも対応、保険加入者から驚きと困惑の声
【虚像市】火災保険業界に激震が走っている。大手火災保険会社「もしかして火災ダイレクト」は12月5日、顧客が持つ「火災の予感」を人工知能(AI)が検知し、未然に消火活動を可能にする「消火器自動配送サービス」を、来年春より順次開始すると発表した。
同社の広報担当者によると、独自に開発したAIが、顧客のスマートフォンの音声データやSNSの投稿内容、スマート家電の利用パターンなどを総合的に分析。特に「最近やけに焦げ臭い」「コンセントから火花が見えた気がする」「ぼんやりと『何か燃えそう』という不安がある」といったキーワードや精神状態の変動を検知した場合、火災発生の「予兆」と判断する。予兆レベルが一定以上になると、自動的に近隣の倉庫から家庭用消火器をドローンで配送する仕組みだ。
「予感」が的中する確率は非公開
しかし、この発表には早くも混乱が広がっている。サービス開始に先立ち、試験導入モニターとなった市内在住の主婦(40代)は、「昨日、晩ご飯の準備中に『カレーが焦げ付きそう』と夫に話した直後、玄関に消火器が届いていて、その後の晩ご飯の心配より、自分の言葉を監視されているようでゾッとした」と困惑を隠さない。また、別の男性会社員(30代)は「妻が『私の怒りは今にも燃え上がりそう』とつぶやいただけで消火器が届いた。家は燃えなかったが、別の意味で家庭が冷えた」と語り、AIの判断基準の曖昧さを指摘する。
もしかして火災ダイレクト社は、AIの「予感」が実際に火災を的中させる確率については「企業の機密情報」として非公開としている。また、不要な消火器が頻繁に届く「誤検知」への対応として、顧客が消火器を使用しなかった場合は「未開封ボーナス」として、翌月の保険料を100円割引するキャンペーンを実施するとしている。これにより、顧客は不要な消火器の処理に困りながらも、「割引のために消火器が届かないよう、日常生活で『火』に関する話題を避ける」という、新たなストレスを抱えることになりそうだ。

