京都市はかねてより議論が進められていた、観光客に対する「はんなり」の義務化を、来たる10月1日より正式に施行すると発表しました。これは、観光客の増加に伴い、本来の京都市が持つ「はんなり」とした雰囲気が失われつつあるという市民からの声に応える形で導入されるものです。
新条例「京都市はんなり観光促進条例」によると、観光客は市内を観光する際、常に「はんなり」とした表情と態度を保つことが求められます。具体的には、大声での会話、駆け足での移動、写真撮影時にピースサインをすることは禁止となります。
違反者に対しては、市内に設置された「はんなり検定員」がその場で違反を指摘し、違反者は罰として、30分間、鴨川のほとりで市民に向かって「おこしやす」と優雅に挨拶し続けなければなりません。

「はんなりトレーニングセンター」
また、条例施行に先立ち、市は「はんなりトレーニングセンター」を京都駅前に開設。ここでは、着物の着こなし方から、お茶の正しい飲み方、そして最も重要な「はんなりとした微笑み」の作り方まで、専門のインストラクターが丁寧に指導します。
条例の発表を受け、観光業界からは賛否両論が上がっています。ある旅行代理店は「京都らしさを守るための素晴らしい試みだ」と評価する一方で、別の関係者は「観光客の自由を奪うものであり、本末転倒だ」と強く批判しています。
市は「この条例は京都を愛するすべての人々が、より深く京都の文化と触れ合うためのもの。はんなりとした心持ちで、古都の風情を味わってほしい」とコメントしています。
■用語説明「はんなり」
「はんなり」は、京都で使われる京言葉で、「上品な明るさや華やかさ、落ち着きのある優美なさま」を表します。語源は「華あり」とされ、落ち着いた中に感じられる華やぎや、優しげな美意識を表現する言葉です。
■用語説明「おこしやす」
事前に約束をしていたり、心待ちにしていた客に対しては「おこしやす」と言って出迎えます。 それに対し、一見の客や不意の客に対しては「おいでやす」を使います。 「おこしやす」の方が、歓迎のニュアンスが強いのです。