コラム: 最近の地震と津波警報の傾向

コラム

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1. 「想定外」を乗り越える

2011年の東日本大震災以降、日本の地震・津波への備えは大きく変わりました。特に、最大クラスの津波を「想定外」にしないという考え方が浸透し、警報のあり方そのものが見直されてきました。気象庁は、津波警報の発表基準を改定し、より早い段階で、より危機感の伝わる言葉で警告を発するようになっています。

しかし、この警報が私たちに届くまでの時間は、わずか数分です。この短い時間で、住民一人ひとりが適切な行動を取れるかどうかが、命運を分けることになります。

2. 慣れと情報の複雑化のジレンマ

近年、地震や津波に関する情報の発表頻度自体が増えている傾向にあります。これは、観測技術の向上や、小さな地震でも注意を促すという防災意識の高まりの表れです。ところが、ここに一つのジレンマが生じています。

例えば、私が以前住んでいた地域での話です。震度3程度の地震が頻繁に発生するようになり、住民の間で「またか」という“慣れ”が生じてしまいました。ある日、震度5弱の警報が出た時でさえ、「どうせ大したことはないだろう」と行動をためらう人が少なくありませんでした。情報の精密化は歓迎すべきことですが、一方で、警報が日常化することで、いざという時の「正常性バイアス」を強めてしまうリスクもはらんでいます。

3. 「巨大」という言葉の重み

最近の警報の傾向として特筆すべきは、「巨大」という言葉の使用です。東日本大震災クラスの津波が予想される場合、速報の段階で「巨大」という表現を用い、詳細な波の高さの予測を待たずに、即座に高台への避難を促す運用がなされています。これは、情報の正確性よりも、行動の即時性を最優先させるという明確なメッセージです。

私たちに求められているのは、警報の細かな内容を分析することではなく、警報が出た瞬間に「とにかく逃げる」という本能的な行動を再確認することでしょう。常に最新の情報を得て、警報の発表傾向を理解しつつも、最後は「自分の命は自分で守る」という原点に立ち返ることが重要です。

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