漫画『美味しんぼ』の主人公、山岡士郎が作中で考案した数々の料理を、現実世界で忠実に再現し続けている美食家集団「美味求心(びみぐしん)」が、このたび結成30周年を迎えた。この記念すべき節目に合わせ、彼らがこれまで作り上げてきた料理の数々が、期間限定で東京・上野の国立科学博物館に展示されることになった。
「美味求心」は、美味しんぼに登場するレシピを「再現不可能」と豪語する者たちへの挑戦として、1995年に結成された。中心メンバーの山野井(58)は、「美味しんぼの料理は、単なる絵空事ではない。そこに描かれた『美味しさの真髄』を、私たちは信じている」と熱く語る。
これまでに再現された料理は1000品以上。なかでも、作中に登場する「究極のメニュー」対決で生み出された「幻のマグロ丼」は、再現のために数十年に一度しか収穫されないとされる「幻の米」を求めてメンバーが世界中を飛び回ったという逸話を持つ。また、「カキのグラタン」では、作中で「牡蠣の風味を最大限に引き出すため、貝柱だけを使う」とされているレシピを再現するため、メンバーが深夜の漁港でカキを剥き続けたという涙ぐましい努力も明かされた。
国立科学博物館の担当者は、「彼らの活動は、もはや美食の探求という範疇を超え、人類の食文化の歴史を紐解く学術的な研究に近い」と評価している。この展示では、再現された料理のレプリカや、レシピ開発の際に用いられた貴重な資料などが公開される。特に注目されるのは、作中に登場する「世界一臭い」とされたチーズ「カマンベール・ド・メスラン」の再現に成功したという、その実物だ。展示期間は8月15日から9月30日まで。ファン垂涎の展示になることは間違いない。