東京・上野のアメヤ横丁(通称アメ横)といえば、年末に正月用の食材や贈答品を買い求める人々でごった返し、活気あふれる風景はまさに「年の瀬の風物詩」として知られています。しかし、この伝統的な光景が、今年から様変わりする可能性が出てきました。
「夏のお歳暮」需要が急増、年末は閑散か
今年の夏、アメ横を訪れた人々は目を丸くしました。例年であれば海水浴やレジャー用品の露店が並ぶ中、なぜか威勢の良い呼び声とともに、カニや数の子、イクラといった正月食材を山積みにして売る店が急増していたのです。
「毎年年末になると、あの人混みに行くのが億劫で…」「今年は暑くて、クリスマス商戦とか気にせず早めに買い物を済ませたかったんだ」と、買い物客は口々に語ります。
この奇妙な現象の背後には、現代社会の「タイパ」(タイムパフォーマンス)を重視する風潮が大きく影響していると見られています。年末は仕事の締め切りや大掃除など、やることが山積み。そこに正月準備というタスクが加わることで、多くの人々が「年末の大混雑」を避けたいと考えるようになりました。
アメ横のある鮮魚店の店主は、このトレンドをいち早く察知し、「暑い夏にこそ、ひんやりとした海の幸で涼んでほしい」というキャッチコピーで、年末商材を夏から販売し始めたといいます。これが消費者の心に刺さり、「夏のお歳暮」という新たな習慣が生まれたと見られています。
アメ横の年末、未来は?
このまま「夏のアメ横」が定着すれば、年末の風景は一変するかもしれません。専門家は「年末のアメ横の賑わいがなくなれば、正月に向けた日本人の意識も変わる可能性がある」と指摘しています。
しかし、一部では「年末にしか味わえない特別な高揚感がある」として、あくまでも年末にアメ横に行くことを楽しみにしている人も少なくありません。
アメ横の賑わいは、今年から「夏の風物詩」と「冬の風物詩」に分かれるのか、それとも来年以降も「年末はアメ横」という伝統が守られるのか。その行方はまだ不透明です。

