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本日未明、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の臨時総会において、東京都全体を対象とする異例の「世界遺産」登録が決定された。登録名称は「大東京:動態的超文化的景観と人類の無形遺産の宝庫」。特定の建造物や自然景観ではなく、「都域全体」をひとつの人類史的遺産として包括的に認定する、世界史上初の快挙である。
決定の背景には、東京が持つ「無形の遺産」の圧倒的な多様性と、それが生み出す「動的な景観」の特異性があるという。評価項目の中核となったのは、以下の3点だ。
1.「満員電車」は、高度な協調性と諦念の産物
ユネスコの審査団が最も注目したのが、朝夕のラッシュアワーを形成する「満員電車」の運行システムと、そこに乗り込む人々の行動様式だった。審査報告書では、「数百万人が極限の物理的制約下で、いかなる暴動も起こさず、完璧な時間厳守を維持する。これは人類の集団的忍耐と協調性の極致であり、まさに生きている無形遺産である」と絶賛されている。「押されても動じないサラリーマンの微動だにしない立ち姿勢」は、日本の武道における「不動の構え」に通じるとして、実演が求められたという。
2.「コンビニエンスストア」は、24時間稼働の生活様式博物館
次に高い評価を得たのが、都内全域に遍在するコンビニエンスストアの存在だ。夜中でも商品の陳列棚が完璧に整頓され、深夜でも揚げ物から公共料金の支払いまでが可能なシステムは、「都市生活における生存と利便性の最適解を具現化した、現代の無形インフラ」と評価された。審査員たちは、深夜3時にからあげくんを買い求め、その場で住民票を印刷する体験に「これこそが真の文明だ」と感嘆の声を漏らしたと伝えられる。特に「くじ引きキャンペーンで一喜一憂する店員と客の短いやりとり」は、都会の孤独を癒やす貴重な人間的触れ合いの儀式として認定された。
3.「渋谷スクランブル交差点」は、予測不能な秩序
そして、有形・無形の境界線として評価されたのが「渋谷スクランブル交差点」だ。青信号と同時に、四方八方から数百人が交差し、決してぶつからない光景は、「カオスから生まれる美的な秩序」として人類の歩行文化における最高峰と認められた。ドローンによる空撮映像を見た専門家は、「まるで訓練されたアリの群れのようでありながら、個々の意思が明確に存在する。この矛盾こそが東京のダイナミズムを象徴している」と評した。
これにより、東京の住民は全員が「世界遺産の構成要素」としての自覚を持つことが求められ、都は「無形遺産保護税」の新設を検討中だという。この登録を巡っては、「単なる都市生活を遺産と呼ぶのは暴論だ」との反発も一部で出ているが、ユネスコの登録担当者は「誰もが想像しなかった、しかし誰もが日々を生きる場所。それこそが最も重要で、最も壊れやすい人類の財産だ」と述べ、今回の決定の意義を強調した。今後、都民全員に「世界遺産登録記念メダル(プラスチック製)」が配布される予定だ。

