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日本駅伝陸上連盟は14日、来年度の主要な駅伝大会から、走者が次の走者へと手渡す伝統の「たすき」を廃止し、電子データによる「ワイヤレスたすき(Air-TASUKI)」を導入すると発表した。選手の身体的負担軽減と、感染症対策、そして「令和の駅伝」としての近代化が狙い。
新ルールでは、各走者はたすきの代わりに重量わずか2グラムのICチップをゼッケンに装着して走行する。中継所(リレーゾーン)には、従来の白線に代わり、半径5メートルの「ペアリングエリア」が設けられる。
次走者はエリア内で前走者の到着を待ち、前走者がエリア内に侵入した時点で互いのチップがBluetooth通信を開始。「ピロン♪」という接続完了音が会場のスピーカーから鳴り響けば、たすきリレー(データ同期)完了とみなされ、次走者はスタートを切ることができる。
連盟のデジタル推進委員長・其処(そこ)までやる氏は会見で、「汗を含んだ布製のたすきは、後半区間では200グラム近くになり、選手のフォームを崩す要因になっていた。ワイヤレス化により、理論上は区間記録が平均0.3秒短縮される」と、その科学的メリットを強調した。
また、これまでの駅伝で数々のドラマと涙を生んできた「繰り上げスタート」も様変わりする。 従来はトップ通過から一定時間が経過すると強制的に出発していたが、新システムではクラウド上でタイムラグを管理。制限時間を超えた瞬間に、待機している次走者のチップへ本部から強制的にパケットが送信され、問答無用でスタートが切られる「リモート繰り上げ」が採用される。これにより、たすきが繋がらない悲劇的なシーンで実況が絶叫する必要がなくなり、お茶の間の心理的負担も軽減されるという。
一方で、現場の選手や指導者からは戸惑いの声も上がっている。 先日行われた実証実験では、混線によるトラブルが多発。「隣の大学の走者と誤ってペアリングしてしまい、他大学の記録を背負って走ってしまった」「再起動している間に5人抜かれた」「パスコードを忘れてスタートできなかった」といった報告が相次いだ。
また、観客が持ち込むワイヤレスイヤホンやスマートフォンの電波が「たすき」と干渉する恐れがあるため、連盟では沿道の観客に対し、「応援時は機内モードへの設定をお願いしたい」と呼びかけている。
古豪大学の監督は「もはや我々が鍛えるべきは脚力なのか、ITリテラシーなのか分からない。最終区間で『通信エラー』と表示されてゴールできない悪夢だけは避けたい」と、遠い目をしながら語った。
連盟は今後、Wi-Fi搭載型シューズの開発も進める方針で、「将来的には選手が自宅から走っても、バーチャル空間でたすきが繋がる『テレワーク駅伝』を目指したい」としている。

