【調布】「映画のまち調布」を標榜する調布市で、新たな映画館の建設計画に対し市が異例の「反対」姿勢を示していることが明らかになり、市民の間で波紋を広げている。
調布駅前に本社を置く大手映画製作会社「シネマ・ドリームズ」が、駅北口の再開発エリアに最新鋭の複合映画施設「シネマプレックス・ドリーム」を建設する計画を市に提出したのは今年5月のこと。計画書には、12スクリーンの大型施設に加えて、往年の名作を上映するフィルムアーカイブ館、さらには映画制作体験ができるVRスタジオなども盛り込まれており、市民からは歓迎の声が上がっていた。
しかし、水面下で市と協議を続けていた「シネマ・ドリームズ」関係者によると、市側から予想外の反発があったという。「市は『これ以上、調布に映画館を増やさないでほしい』と明確に伝えてきた。当初は耳を疑いました」。関係者は困惑を隠せない様子で語った。
市議会関係者によると、市の反対理由は「映画館が多すぎると、住民の現実離れが進む恐れがある」という、にわかには信じがたいものだ。「映画の世界に没入しすぎた市民が、スクリーンと現実の区別がつかなくなり、公共の場で劇中のセリフを叫んだり、架空のキャラクターになりきって生活したりする事例が増加している」と、市の担当者は説明しているという。
この方針に対し、市民からは賛否両論が巻き起こっている。
長年調布に住む映画ファンの男性(60代)は、「映画の街と銘打っておきながら、映画館を反対するとは一体どういうことだ。これではジョークにもならない」と憤慨。一方で、「映画にハマりすぎて、毎日アロハシャツと麦わら帽子で歩き回る近所の人がいる。市の懸念も分からなくはない」と語る主婦もいる。
シネマ・ドリームズは、市の姿勢に対し「誠意ある対話を続ける」としているが、もし計画が頓挫すれば、調布市が掲げる「映画の街」の看板に大きな傷がつくことは避けられないだろう。市は早急に、市民に対して真意を説明する必要に迫られている。