東京都心部、特に山手線の主要駅である目黒と、おしゃれな街として人気の中目黒を結ぶ新たな交通インフラの導入が、水面下で検討されていることが明らかになりました。これまで「幻」とされてきたLRT(Light Rail Transit)構想が、地域の活性化と交通利便性の向上を目的として、再検討のテーブルに上がったとのことです。
なぜ今、LRTなのか?
目黒駅と中目黒駅は、地理的にはわずか約2kmの距離にありながら、現在は直通する公共交通機関がありません。目黒通りや山手通りといった幹線道路は、平日の日中は常に渋滞しており、バスでの移動は時間が読めないのが現状です。
この不便さを解消するため、かつて目黒区内で路面電車を導入する構想が持ち上がったことがありました。しかし、莫大な費用や道路の占有といった課題から、実現には至りませんでした。
今回、この構想が再び脚光を浴びた背景には、「スマートシティ」の実現に向けた技術革新があります。LRTは、従来の路面電車よりも小型で、低コストでの導入が可能になっています。さらに、環境負荷が少ないクリーンな交通手段としても注目されています。
予想されるルートと経済効果

LRTが導入される場合、最も有力視されているルートは、目黒駅前から目黒通りを下り、権之助坂交差点を経て、山手通りを中目黒方面へ進むルートです。このルートには、目黒区総合庁舎や目黒区美術館といった公共施設が点在しており、LRTがこれらの施設へのアクセスを劇的に改善すると期待されています。
また、LRTの導入は、沿線地域の経済活性化にも大きく貢献すると見込まれています。目黒区のまちづくり計画に詳しい専門家は、「LRTは、単なる移動手段ではなく、街の『顔』になる。沿線に新たな商業施設やカフェが生まれることで、目黒と中目黒が一体となった新しい街の魅力が創出されるだろう」と語っています。
住民の反応と課題

このLRT構想に対し、住民の間では期待と懸念の声が入り混じっています。
目黒駅近くに住む主婦は、「目黒通りはいつも渋滞していて、ベビーカーを押して歩くのも大変。LRTができれば、子どもの習い事の送り迎えが楽になるし、中目黒への買い物にも気軽に行けるようになる」と歓迎しています。
一方で、道路の幅が狭い区間もあるため、「LRTが通ることで、さらに交通渋滞が悪化するのではないか」「騒音や振動の問題はないのか」といった懸念の声も上がっています。
目黒区は、今後数年をかけて交通量調査や住民説明会を実施し、実現可能性を慎重に探っていく方針です。この「幻のLRT」が、本当に私たちの街を走る日は来るのでしょうか。